翌朝、黄さんが車で迎えにきてくださり新幹線の駅へ。私は衣を着て乗車です。
日本の新幹線システムの導入して、我が国より立派な駅です。全国8000か所以上、コンビニでもチケットが買えるそうで便利ですね。
(日本ではJR東日本の駅でJR東海のチケットを受け取れません)
台南の一つ手前の嘉義で下車、陳 智信さんの出迎えを受けました。
陳さんは、高雄でお菓子屋さんをなさる方です。西浦さん、黄さんの二十数年来の念仏道友で、仏教界では大変有名な方だそうです。彼が、嘉義、台南の寺院訪問のコーディネートをしてくださいました。
慈慧寺の尼さんがワンボックスカーを運転して迎えにきてくださいました。農村地帯の嘉義は、張さんの故郷だそうで、見渡す限り田畑が広がりバナナなど果物も有名だとか。法衣でマニュアルトランスミッションを駆使して、郊外の慈慧寺まで長閑なドライブ。やがて畑と竹林に囲まれた寺に到着しました。車が本堂正面に近づくと、またもや横断幕がかかり正面の階段両側に数十人の方が並んで歌でお出迎えしてくださいます。
大きなビデオカメラやカメラを構えている方も待機しています。車の中でお袈裟をかけて、外に出ると手拍子と歌が一段と大きくなります。女性のご住職、釈法慧法師の先導で本堂で三礼。まずは応接室でお茶や、山盛りの果物、トマト、芋の接待を受けました。日本語がお上手な信者さんが、お寺の成り立ちや畑の作物について説明してくださいます。
お寺は住職のお母さんが開山で30年ほど前にできたそうで、私達が日本から初めて訪れた僧侶だそうです。どおりで大変な歓迎です。陳さんがだいぶ大げさに私達の事を持ち上げてくださったのではないでしょうか。本堂の準備が整うと、僧侶、信者の方の最後に住職に伴われて山岡上人、私の順番で入堂、焼香、礼拝し、お堂の中心に着座いたしました。法要・念仏が行われました。
鐘と木魚をすごい勢いで叩く維那?の先導で「なもあみとーふぉ」と称えます。やがて行道(節を付けて念仏を称えながら右回りに堂内を巡ります)が行われました。僧侶も信者も一体となって念仏を称えます。男女比は女性が7〜8割でしょうか。
法要が終わるとお昼ご飯です。私達が通された特別食堂は丸テーブルで、またもや食べきれない量の精進料理が供されます。料理長は禅宗の典座のように、ナンバー2の法師だそうです。次に訪問する寺の僧侶も迎えにきてくださり、一緒に食事をしました。申し訳ないですがたくさん残してしまいました。食後、麦わら帽子をかぶって畑を案内してくださいます。せっかくなので、「真生一味大念仏」を台湾の方にも体験して頂きました。
黄さんは大変気に入り、後から車の中で口ずさんでいました。
午後は本堂に机と椅子をコの字にならべて座談会です。
戒の事や、僧侶の育成システムについて質問を受けました。善導大師の念仏を継承する、言ってみれば兄弟のような日本・台湾の念仏宗ですが、時代背景や生活習慣の違いから「専修念仏」と「持戒念仏」の違いがあります。
台湾の僧侶は結婚せず精進料理しか食べません。在家の出家への敬意は日本と比べ物になりません。時間をかけて日本の浄土宗の教えを説かないと、混乱を招くと感じましたが、仏教伝来から現代に連なる仏教、浄土教の流れを話し、理解を求めました。法然上人や、日本の歴史を能くご存知の方もいらっしゃり熱心にお聞き頂きました。交流を深める中で相互理解をしていく必要を感じました。終了後本堂前で記念撮影。強い日差しの中で、小鳥達のさえずりが印象に残っています。車に乗り込むと再び皆さんが見送ってくださいました。
再び田園風景を走ること一時間ほどでしょうか、台南県新榮市の妙法禅寺に到着。駒沢大学に留学されていた釈伝煌法師が出迎えて下さり、本堂で日本式の法要をさせて頂く。
十数年前にできたという極彩色の美しい伽藍です。
寺務所棟に案内されると台湾で最も尊敬される長老のおひとり、住職の釈心田法師が出迎えて下さいました。伝煌法師の兄弟子で心田法師は禅に念仏修行を取り入れ、信者の多くは念仏行をしているそうです。彼は美国世界仏教伝布教会総会長、仏教電視慈悲台総裁という肩書きを持っています。アメリカに2か寺、台湾に3か寺の住職をしており、台湾で初めての仏教専門衛生放送チャンネルを経営しているといいます。陳さんが台湾での24時間不断念仏会の実現を見据えて紹介して下さったのでした。テレビの運営には毎年3000万円以上のお金がかかるそうです。「スポンサーは?」と聞きますとコマーシャルを入れたくないので、100%信者の寄付でまかない、24時間仏教関係の放送をしていると言います。そして現在では同様の仏教チャンネルが6局もあるそうです!日本では放送法やニーズの問題で考えられませんが、実際ホテルのテレビでも仏教チャンネルを視聴できました。
24時間不断念仏への念仏中継や、将来台湾不断念仏会開催に向けて尽力頂けるようにお願いをいたしました。本堂正面で記念写真を撮り、伝煌法師が自らハンドルを握るお寺の車両に乗り込みました。心田法師自ら見送りの先頭に立ち私達を送り出して下さいました。新幹線の台南駅まで送って頂く間、頭脳明晰、物腰柔らかな伝煌法師と日本・台湾の仏教事情を楽しくお話ししました。彼は妙心寺派の修行をし岐阜の専門道場に籍を置いた本格派です。駅に着くと、陳さん、慈慧寺の法慧法師も見送りにきて下さっていました。誠にありがたいことでした。
新幹線で台北に向かいます。スーツケースとたくさんのお土産を張さんが見張って下さり無事台北到着。タクシーで繁華街のホテルへ。荷物を置いて再びタクシーで郊外の菩提学苑を訪問しました。
開明法師が主催する勉強会に、夜八時を過ぎているのに老若男女が参集していました。私達が訪れた時、講義の最中でしたが中断して法要念仏、歓迎して下さいました。東日本大震災以来、いつも不断念仏会に念仏中継して下さっていることに感謝の意を伝え、感謝状をお渡ししました。
つづいて、皆さんが輪になって座談会。日本語のわかる開明法師の前で緊張しました。
「経済発展と仏教の関わり」等の質問も出て、台湾のおかれた状況を垣間見る思いがしました。
いよいよ最終日、はじめてゆっくり朝食をとり、故宮博物館へ。二十数年ぶりに訪れました。立派なエントランス、豪華な展示室。昔のことはあまり覚えていませんが、初めて訪れたような印象でした。中国からの観光客の多さに驚き、中国共産党の弾圧を告発するような立て看板や、「法輪功」とおぼしき一団が門前の一角で瞑想や太極拳を披露しているのが、台湾と中国の現実問題を思い出させてくれました。
山岡さんと私の二人で二時間半をかけて展示室を一通り見終わって、入り口で黄さん、西浦さん、張さんと再会。西浦さんは昨日までの精神的疲れから体調を崩していましたが、休んだせいか少しよくなったようです。
タクシーで台北郊外の保養地陽明山へ。松や紅葉などの苗木の産地で、高級住宅地で週末は行楽客が訪れる所だそうです。日本でご縁を頂く邱さんの末の妹さんが自宅兼、会員制の高級レストランをなさっています。邱さんのおばさんが自家用車で台北市内までお送り下さり、タクシーに乗り換え松山空港へ。何とみんなの荷物を、張さんがすべて空港に運び私達の到着を待ってくれていました。預ける荷物の重量オーバーも航空会社職員と交渉して超過料金を免除してもらいました。以前は毎月のように台湾を往復して食材などを日本に運んでいただけに、言葉の意味はわかりませんでしたが張さんの交渉術は鮮やかでした。航空会社の受付嬢の笑顔も印象に残っています。いよいよ、黄さん、西浦さん、張さんとお別れです。黄さんは涙を浮かべて握手をしてくれました。「また必ずうかがいます。再会!」と答えながら、私の胸を熱いものが満たしました。西浦さんは24日まで張さんは25日まで台湾に残ります。必ず墓参りをするそうです。山岡さんと私の二人は台湾に大歓迎を受けた3泊4日を振り返りながら、羽田に戻りました。
2014年5月17日〜18日の第9回増上寺24時間不断念仏会で、慕西念仏会、菩提学苑、新たに慈慧寺からも念仏中継して下さいました。またのインターネット上の再会を楽しみにしています。
南無阿弥陀仏